まだ始業には早くて、人はまばらだ。

でもあと五分くらいすれば、一気に人がふえるだろう。

窓際ではうちのクラスの王子様が大人気に人だかりを作っている。

というかみんなそこに集中しているせいで、人口密度がおかしなことになっているのだけれど。

王子様は特定の人を作らない方がいいと思うのだけれど、うちのクラスの朱本光成は違うようで告白されること早くも三回。

その全てをOKして付き合っている。

本人達から聞き出したことで、噂にはなっていないが時間の問題だろう。

ちなみにまだ誰とも別れていない。

三股だ。

将来の夢はジゴロなのかもしれない。

席について、授業の用意をしているとのどかが走って教室に入ってくる。

もうそんな時間かな、と時計を見ると8時39分。

あと15秒でチャイムがなるところだった。

のどかは陸上部なので、ギリギリまで朝練をしていたのだろう。

朝のホームルームでは三年の先輩方がやって来て、応援団の勧誘をしていた。

もうすぐ体育祭なのかと、早くも辟易する。

運動は苦手だが、交流を広げる機会だからサボってもいられない。

応援団メンバーの希望に手をあげながら、三年生にとっては最後の体育祭なんだよなーと、少しだけ怖くなった。