じわじわと時間が流れて。

じわじわと葉月の玉を守る駒は減っていく。

攻めて攻めて。

守って守って。

お互いの特徴が色濃くでた戦いは、なんとか私が押していた。

「あと何回こうやってできる」

「葉月が望むなら何度でもだよ。感傷に浸るにはまだまだ早いよ」

「でもあと半月もないよ」

「卒業だもんね」

「本当いつでも余裕って感じですね、王手」

「そう見えるだけで案外ギリギリで耐えてるものだよー」

「ちっ」

一歩下がった私の玉に葉月の銀将が迫る。

「あんまり深追いしちゃダメだって」

その銀を飛車でとり、私の攻勢が走る。

完全に意識していなかったところからの攻撃に葉月が焦っていくのが手に取るようにわかって面白い。

人間攻めてるときほど罠にかかりやすいものだから。