真綾の歩調に合わせて歩くと、後ろから何人にも抜かされていく。

一本道だから、たまにクラスメイトもいて少し気恥ずかしい。

そして、楓もとおる。

俺の横を何も言わずに歩いて抜かしていく。

イヤホンで耳をふさいで、律儀に着ているブレザーのポケットに手をいれて。

長い髪がキラキラと光を反射して、風に揺れる。

風が吹けば舞い上がり、シトラスの香りがした。

早足な楓との間は少しずつ開いていく。

そして信号で楓は渡りきり、俺たちは赤でとりのこされた。

「今の人髪の毛すっごい長くて綺麗だったねー。」

「ん、あぁ楓か?」

「楓さんっていうの?同中?」

「そう、1、2年でクラス一緒だった。」

「あんなに長くするのどれくらいかかるんだろねー」

「中1のときは真綾と同じくらいだった気がする」

そう言って真綾の髪に触れる。

楓とは違って、波打つ髪はふわふわと柔らかく日の光を溜め込んだみたいに温かい。

「なんかなでなでされてるみたい。」

「まあ、身長差的にはそっちの方がしっくりくるよなー」

「もぉ、葉月くんっ」