「付き合う…のかな」

楓に意見を求めるように聞いてみるが、反応はうすい。

「別に葉月が誰と付き合おうが私の知ったこっちゃないんだよ。依頼だからきいてるだけだし。」

「でもさ、俺に彼女ができたら今みたいに気軽にこうできなくなるかもよ?浮気疑われたくないし」

「そう、だね。じゃあ、やめればいんじゃないかな」

「ゲームを?」

「………どっちをやめるのも、葉月の自由だと思うけど」

ゲームをやめるんでも、付き合うのをやめるんでも、どちらか一人を選ぶこと。

楓はどちらかを奨めてくれるようなことはしない。

自分がどうしてほしいと思っているかすら伝えてくれやしない。

「私に君の行動を縛る権利なんてないもの。君との間にあるのは、貸し借りじゃなくて勝ち負けだから、手を切るのになんの損も生まれやしないよ。」

「情報はどうするんだよ…」

言い訳のように反論する。

それに意味などなくても。

「私一人で出来ないこともない。」

頭のなかで、泡が弾けた。

思考は行き止まりに辿り着き、動かなくなる。

「じゃあ、終わろうか。」

俺たちのゲームを。

残念なことに、黒星は俺の方が多いけれど仕方がない。

楓じゃない人が俺の隣に並ぶようになるのだから。

「わかった。君と竹野真綾は付き合うんだね。ならそう相談主に伝えておくよ」

「なんとも思ってくれない?」

「何を思えばいいの?」

「なんでも…」

楓は手早く机の向きを直してしまうと、もうスクールバッグを抱えて帰ろうとする。

「……末長くリア充爆発しやがれ」

「おめでとうって意味だと思っておく」