8月とメープルシロップの相性

そのままふたりで順に店をみて回って、クレープを食べた。

そのあと俺にとっての今日の本題である、楓に渡すもの探しだ。

「竹野がバレンタインのお返しにもらって嬉しいものってなに?」

「え、急になんで?」

「あーっと…、知り合いにお礼?あげなきゃいけないから。相手一応女だし、竹野の参考になるかなって思って」

「なるほどなるほど」

連れていかれたのは、外観が不思議の国のアリスをモチーフにした女の子がいっぱいのお店だ。

「どんな子かわかんないけどここのをもらって喜ばない女の子はいないよ」

「おー、ありがとな」

店内をみて回るのも窮屈なくらいで、人が一杯だ。

焼き菓子ではなく、ショーケースに並ぶ、カラフルなマカロンを選んだ。

一緒に先ほど買ったヘアピンも包装してもらい、金額的にも、労力的にも三倍返しを守れたと思う。

「今日はありがとな」

「ううん、一緒に遊びたいって言ったの私だから…、」

「どうかしたか?」

「え?なんでもないよ?」

わざとらしいくらいの満面の笑顔を咲かせて、竹野は手をふった。

「じゃあね、バイバイ葉月くん」

「おう、じゃあな」

駅の改札口で別れて、その日のデートを終えた。

内容的にはただの買い物としか思えなかったがこれで良かったのだろうか。