2月27日。

合格発表は昨日で、浮かれる人と沈む人がいたけれど、受験が終わった安心感からか教室は騒がしい。

大した内容もない授業が終わって、すぐに席を立とうとした私の目の前に将棋板がおかれた。

「葉月、暇なの?」

「負けたままだから入試に集中できなかった」

「まさか、落ちたのか!?」

「まさか」

「なんだ…、良かった」

「落ちるような高校は選ばないよ。そのために手堅く藤西なんだから」

「葉月らしいね」

「じゃあ、進路を教えてもらおうかな」

「そのために得意な将棋だもんね」

葉月が駒を並べ始める。

出来れば言いたくない。

出来ればじゃない、絶対言いたくない。

だから、かたなくちゃ、いけない。