8月とメープルシロップの相性

足早に帰ってきた葉月は、水色の紙袋を持っている。

駅前のショッピングモールに入っている、有名なパティスリーのものだ。

「ん、これ」

葉月はそれをずいっと私の前につき出す。

「え、なんだい」

「前言ってたろ、三倍返しって。渡し忘れるとこだった」

「…………………あ」

やっと思い出した私にそれを受け取らせて、手早くカードをオープンする。

すぐにそれを伏せて、私の番へ。

少し覚束ない手で私もカードをオープンする。

まさか、覚えているとは思わなかった。

むしろ私が忘れていた。

ホワイトデーのお返し。

日にちも三倍返しも守るなんて、アホほど律儀だ。

神経衰弱をつづけながらも、紙袋を開く。

中にはプラスチックの透明な箱にマカロンが三つ並んでいる。

平べったい普通のマカロンではなく、そのお店の売りのデコレーションされたものだ。

厚く絞られたクリームを色とりどりのアラザンやコンフィズリー、チョコレートが飾っている。

「可愛い…」

思わず感嘆の声をあげると葉月が笑った。

「なんだよ」

「いや、楓でも可愛いの好きなんだなーって思っただけ」

「馬鹿にしてるね?」

「してないしてない」

「まったく、君の中で私がどういうイメージなのか一度じっくり問いただす必要がありそうだよ。」