葉月が席を立つ。

エアコンを消すといっそう静かになった。

私もそれに倣って、窓の鍵を閉めてから教室を出る。

葉月が鞄を持ってでてくるのを待ってから、教室の電気を消した。

廊下はとてもくらい。

暗くて、横を歩く葉月の音だけがしている。

階段の突き当たりに光る非常灯が、道しるべみたいに光るだけだ。

「高校どこいくの」

「内緒だって、私に勝てば教えてあげるよ」

「その頃にはもう進路決まってるじゃん」

「別に私に合わせて変える訳じゃないでしょ?」

「そりゃあ、そうだけど」

「だから、内緒」

階段を降りる時には、夜目の利かない私に合わせてゆっくりと降りる。

そうやってなれ親しんだ距離感が寒風に晒されて消えていってしまうように。

ここでバイバイだ、と私たちは左右に別れて歩き出した。

「よいお年を」

「また来年な」