4月7日



「あ、楓」

長い髪のハーフアップをみて反射的に声をかけた。

ワインレッドのリボンで結われた髪がサラリと流れて、楓がこちらを振り向く。

「1組か」

「あー、うん」

なぜか目を反らして楓は曖昧に答えた。

それから、隣の男子を俺に紹介してくる。

なかなかのイケメンで、楓は自慢げに胸を反らした。

確かに俺たちみたいな二人に八桐のような人間は重要だ。

異性から人気を集める人間。

わかってはいたが、まるで楓と俺が特別な仲であるように振る舞う。

明らかな牽制。

いつから俺はこんなに心が狭くなったろうか。