誰かも書いてないその文字は、分かりやすいクセ字。

分かる。

誰が書いたのか。

ページをめくって、最後のページにあるたった八文字だけのメッセージ。

<元気でいろよ 葉月>

特徴的な【て】の書き方が一致して。

顔がひどく熱い。

熱を持って仕方がない。

視覚情報が神経を伝って、脳に届いていくのが電撃みたいで。

心臓がはやがねを打つ。

直視できなくて思わずアルバムをとじた。

「葉月、葉月……?」

ねぇ、どうしてくれるんだい。

掻き乱された思考の温度にオーバーヒートを禁じ得ない。

「そういうところ、ほんとにきらい」

真っ赤な頬で否定する。