3月15日




リコーダーで奏でられる威風堂々にあわせてゆっくり講堂から出ていく。

すすり泣きの声がそこらから聞こえる。


卒業なんだと、実感もないのに終わってしまう。

別れをおしんで淀む教室に、俺は友達と集まって先生の到着を待った。

泣きながら教室に入ってきた担任の最後の話を聞く。
こんなときでさえ楓は、背に定規が刺さったように姿勢がよくて、その姿はどこか無感動さを語るようだった。

最後の号令、と先生の言葉でクラス委員長が涙まじりの声をかける。

挨拶をして、三々五々集まって語らう。

二年も三年の教室にやって来たせいで、教室も廊下も人に溢れてしまう。

「葉月先輩っ」

見知った後輩に呼び止められて、仲のいい数人で話をする。
春休みの遊ぶ約束。

高校生活の希望とか。

彼女と自然消滅しちゃいそうな話とか。

楽しかったと思い出す日々とか。

それから後輩たちにボタンをあげて、寂しくなったブレザーで家路をすすむ。

友達と別れた帰り道、楓と何も話さず離れてしまったと少しだけ後悔した。