「お前友達いないと思ってたけど案外いるんだな。」

「おい、なにしみじみと読んでやがる。書けよ」

「しかも女子だけじゃないんだ。」

俺より先に書いた人間がいて、俺と違って楓に頼まれて書いた人間がいたかもしれない。池田宗太、山内勇斗、柊雪仁、島田浩平、エトセトラエトセトラ。

「男子も結構ーーっ痛」

楓が卒業アルバムの角で頭を攻撃してきた。

楓はもう書き終わらせてしまったのだろう。

あれだけの短い文章だ。

「ほら書けたよ。」

「卒アルの角はひどい。なんて書いた?」

「まあ、適当に。死ぬなよって」

「おっけ、わかった。」

どうしようかと、惑う。

けれどやっぱり少しだけ付け足した。

「………書けた?」

「ん、ok」


楓がくれたのは、ビターのブラウニーだった。

甘くて、苦い、美味しいけれど可愛いげのないそれをホットミルクと飲み込んだ。

大丈夫。

明日もあるし、まだ少なくとももう一度会えるから。