(だから、足跡だけでももらおうか。)

渡した卒業アルバムに楓が書く姿を見る。

長い黒髪に隠れて表情はうかがえないけれど、楓はしばらく悩んでからペンを動かしはじめた。

《今まで仲良くしてくれてありがとー。高校行ってもよろしくね 楓》

そんな適当な、他の人の間に埋もれてしまうような定型文。

俺も同じように適当に書いた。

籠めた想いが何事かはわからないけれど、余白のすみに小さくつづる。

《元気でいろよ 葉月》

それから数ページを捲り、アルバムを眺める。

色とりどりのペンが埋める中には、男女問わずのメッセージがある。

「お前友達いないと思ってたけど結構いるんだな。」