6月10日



「葉月くん、別れよう…」

それは実際、唐突でもなんでもなかった。

しかし、こう、なんというか向き合えないものがある。

「えっと、どうして…」

「…っだって、葉月くん、私のこと好きじゃないでしょっ?」

震える声でそれは届く。

その言葉に何も言えなくなった。

「…葉月くんが私のこと好きじゃないの、わかってたの。私から告白したし、同情なのかなげやりだったのか、私への気持ち以外の理由で付き合ってくれたのは知ってたから。」

そうじゃないと言ってやれない。

『そうじゃない』わけじゃないのが、自分の中で明らかだから。

「私が頑張ればなんとかなるって思ってたのに、もうだめなの。応援合戦、葉月くん見てなかったでしょ。そのときどこ行ってたか私知ってるの。莉緒ちゃんから聞いたから。」

こんなのは我が儘が通らなかった子供が駄々をこねるのと同じこと。

こっちをみてと癇癪を起こしたのと同じこと。

「ごめん、真綾」

そこに恋はなくて、俺は真綾を当て付けに使っていたのだ。

真綾の顔がくしゃりと歪み、あとからあとから涙が溢れてくる。

「教室で、通学路で、駅のホームで、体育祭で、私葉月くんの、ことみてたから、知ってるの。葉月くんの気持ち、誰に向いてるか。」

「やめて、真綾。お願いだから」

「だってひどい!こんなのってないよ。私の気持ち、どこに棄てればいいの!?こんなに葉月くんのこと、好きになったのにっ」

「ごめん真綾」

「なんで葉月くんまで謝るの!?二人してバカみたいだよ。葉月くんのバカァっ!!」