「私と葉月は特別な関係だと言えるよ。
もしかしたら過去形なのかもしれないけれど、私は今もそうだと疑わない。
友達じゃない。
でも、恋人なんかじゃないし、片想いだなんて、馬鹿にしないでほしい。
あれは、私の敵で、同時にたった一人の仲間だもの。」

「意味分かんないです」

「私と葉月は、協力してるの。お互いのあるべき場所を守るために。そのために勝負して、奪い合ってる。中学生の時からずっとだよ。中学生の時からずっと。私たちが受け取ったいろんな秘密を。
でも、さっきも言ったけど私は自惚れやだから、葉月は私を選ぶと思ってたんだよ。
あれは私を好きになると思ってた。だから君と葉月が付き合うと聞いて、欲が出た。
それだけだよ。」

「…なにそれ、勝手です。答えになってないし。私が聞いたのは、」

竹野真綾はスカートをにぎりしめる。

レモンティーを空にして、ペットボトルのキャップを閉めてから、立ち上がる。

「…答え、だよ。それだけだ。」

「違うよ、若松さん。一番大事なことを若松さんはいってないっ」

下唇を噛んで、逃げ出したいのを抑える。

竹野真綾が知りたがったこと。

「…恋はしてないよ。
今はそう。でも、これから好きになるかもしれない。
まだ私も彼も負けてはいないんだ。奪い合ってる最中だから」

本当に奪い合っているのは、真実じゃなくて、相手の気持ち。

ごめんね、真綾ちゃん。

これは心から謝るけれど。

君に負けてるつもりはないんだ。