「お姉ちゃん、ずっと泣いてたよ。女の子は泣かせたらダメってしらないの?」
チイの病室前の廊下は人気がなく、空の声と鼻をすする音がよく響いた。
「そうだな、多分泣かせたのは俺だ」
小さな子どもにお説教させられるのは初めてかもしれない。
というか、初めてだ。
少しおかしな気分になりながら、空の頭をくしゃくしゃと撫でて笑って見せた。
「大丈夫。俺が責任とって泣き止ませるから」
「約束、だよ?」
眉を顰めて不機嫌な口調で言う空に笑をこらえながら小指を差し出した。
「ああ、約束だ」
ぎゅうっと結ばれた空の小指は俺より少し熱かった。
