恋桜〜届けこの想い〜





チイの肩は震えていて誰よりも小さく、儚く見えた気がした。



「…!?ちいチャン…」



トーレーニング器具を持ったきた飯田さんは驚いていた。


無理もない。


さっきまで笑顔で笑ってたんだから。




困惑気味の飯田さんは黙ったまま。


口をぎゅっと結んで、表情がよくわからない。



少しの間の沈黙。


チイの小さな嗚咽だけが聞こえた。



ポタ、ポタ。


チイの涙で出来た小さな水溜りはさっきよりもほんの少し、大きさを増して。



「……ごめん」


涙で湿っぽい声でそう言った。


何に対しての“ごめん”なのかわからない

けれど、たったひとことそれだけを残し

てチイは俺たちの元から離れて行った。




きっとチイが抱えている心の傷は


こんなものじゃない。



あの突然の涙よりも大きい。



もっともっと深くて、暗い。



きっと何かが、あるはず。