「…楽しそうだな」 ポツリと呟いた俺のひとり言は 風に攫われていった。 「そろそろだよ」 ん?、と彼女に見ると パシン。 俺の聴き慣れた音。 ミットにボールが収まる音。 俺の大好きな野球の音がした。 「ナイスボール!」 座って構えていた空の父親が立ち上がり 大きく声を張り上げる。 その瞬間。 俺の肩を襲うジリジリとした感覚。 肩、が熱い。 痛みとは違う、まるで俺の左肩が投げた い、野球がしたいと言っているようだ。