「あっれ??辻宮と出川、早く帰れよ~??」

教室のドアから顔を覗かせたアイ、じゃなくて…先生が不思議そうに私たちを見ている。

「「はーい」」
「あ。辻宮、ちょっと教科書類運ぶの手伝ってくれないか??」
「えー!?なんで私ー!?」
「直感。ってか、目が合ったから」
「これから絶対先生の方見ないし……ッ」

ムスッとした表情の私をからかうように唯は手を振って行ってしまった。
友達甲斐のないやつだな、おい。

廊下を先生と並んで歩きながら私は密かにバスケットコートの方を見る。
今日、部活あるはずだけど―……。


「じゃあ、辻宮。コレとコレ!!よろしく」
「重ッ!!しかも現国と数学の教科書~!?」

3種類とも分厚くて重いのである。

「筋力をつけよ、女子高生!!」
「~~~」
「そうだ、辻宮」
「なんですか?」
「なんか、どっかで俺と会った事ない??」
「え―……」
「どっかで話したことあるような気がしてさぁ。……覚えない??」
「特に、は……」
「そっか」

モヤモヤした感じの先生を見て、思わず本当のことを言いそうになった。
危な……。

これは、絶対に私だけの秘密だ。

「ごめんな、教科書運ぶの頼んだわけって実はソレ聞こうと思ってさ」
「そうなんですか」
「じゃ。それ、よろしくな♪」
「……はい」

少なくとも

私はこの時は


河野のことが、好きだった。