「バイバイ、夏波」
「うん、バイバイ」

手を振り、バスに乗り込んだ私は小さくなる親友たちを窓越しに見る。

いつもの帰り道。
バスの中は人が少なく、買い物帰りらしいおばさんとどこかの中学生の男子が二人乗っているだけだ。

窓際の席に座った私は鞄から携帯を出して、電源を入れる。
うちの高校は携帯禁止だから、バレないようにみんなそうしてる。

「はぁ……」

無意識に漏れたため息は疲れから。
一日中笑顔でいたせいで少し頬が引きつったような感覚。
もう、慣れてしまった作り笑いは『いつも笑顔の夏波』と簡単に周りを思い込ませる。
大切な、3人の親友さえも、いとも…簡単に。

私って、そんなヤツ。

一人になると自分の表情が変わるのがわかる。
いつもよりずっと、固くて閉ざしたような顔。

とっぷりと沈んでいきそうになった私の手元で低い音を立ててケータイが震えた。

唯(ユイ)かな?
後でメールするっていってたし。

画面を見た私はガッカリして肩を落とす。
ただの間違いメール。