この1時間は、俺のもの。


は......?

冗談でしょ、と半ば祈る気持ちで藤原の目を見つめるが、冗談のjの字も見当たらなくて、愕然とする。


「いや、やらないからね!1時間?ふざけないで!ほら、シャーペン返して」

差し出す私の手をつかんでなだめるように藤原が言う。

「ふざけてなんかないから!ね、流子ちゃん、1時間でいいんだよ」

「いや、1時間でも1秒でも嫌!てか、手触らないで!」

「じゃあ、シャーペン返さない」

「それも嫌」

「じゃあ、1時間」

埒があかないと、席をたとうとすると、藤原は静かに付け足した。

「でも、流子ちゃん、今日これしかシャーペンないでしょ。これなかったら、午後の授業、やばいんじゃない?」