この1時間は、俺のもの。


「お客様、すごくお似合いです!」

店員さんが目を細めて手を叩いている。

「どれどれ?うわぁ、めっちゃ可愛いじゃん流子ちゃん!
超可愛い!マジ可愛い!」

私はどうしていいかわからず、マネキン並みに挙動不審。

「ね、店員さん、これそのまま買うよ。いくら?」

「え、そのまま...ですか。えっと、少々お待ちください」

その言葉にはっと我にかえる。

「ちょ、藤原。これ全部買うって、私全然お金ないよ!」

「いやいや、俺が払うし」

慌てて値札を確認する。私は卒倒しそうになった。

いつも買う服の2倍以上する!!

ひらがな4文字のあの店の2倍以上する!!

「ちょっと、こんな高いの買ってもらうわけには...」

「え?これくらいが普通だよ!ほんとはもっと高いところでいいもの買ってあげたかったけど、ジョウさんがそれじゃあ、流子ちゃんがあまりにも気を遣うだろうって」

いやいや、十分高いよ!って言おうとしたところで、店員さんが戻ってきた。