この1時間は、俺のもの。


あり得ない、あり得ない、え、何で、何で、あり得ない、あり得ない......

いつもの頭も働かず、わたしはすっかり冷静さを失ったまま、座席に座っていた。

高級そうなシート、座り心地抜群なはずなのに、今はそれどころか、居心地の悪さすら感じる。

「ねぇ、流子ちゃん。気分はどう?」

リムジンの奥から出てきた藤原は制服から着替えて、洒落たシティボーイになっていた。

不覚にもかっこいいと思ってしまった自分を恥じ、目を逸らして答える。

「最悪よ」

「えー!車酔いするほど揺れないと思うのになぁ」

頭をかきながら、私の隣に座る。

「もしかして、緊張してる?俺のかっこよさに?」

「んなわけない!」

むかつく、むかつく、むかつく!
ドキドキしてる自分も、調子こいてるこいつも!

あぁ、早くこの1時間、過ぎ去って......