「…これ、ほんとに朝ご飯?」
食堂に入るなりクラッとなった。どうみても豪華すぎる。こんなに豪華なの、夕ご飯でも食べないよ…ホテルの朝食でならあるけど…
「うん。せやで。ビュッフェスタイルやからなぁ。」
あ、そういう事か。バイキング形式だって事なんだ。朝からこんなモノって…
「…あれ?処で皆って…もう朝ご飯終わらしたの?」
「いや?まだやけど…アンタが終わってから、食べる。主であるお嬢様より先に食べるて…普通せぇへんやろ?」
…そういうものなんだ…ん?いやでもさ・・・皆食べてないんだよね。
「…じゃあ決まりっ。皆で食べようよっ。」
「はぁ?つくづく魔王っぽくない魔王様やなぁ。…前代未聞や」
「えっ?ダメ…だった?…だって…こんなに広いのに私一人ってさ、何か寂しいよ…それにこんな量、到底無理だしっ。」
私が話したかなりの沈黙の後、佐藤さんが応えてくれた。
「……お嬢様が良いなら、俺はイイよ。」
「ありがとっ。」
「…当然。」
「じゃっ。俺も行くわ。」
そう言って入ってくれたのは田辺くん。
「…お嬢様の隣は俺だからな。」
「俺やてアイツの隣がええってっ。」
「…俺」
「俺やてっ。」
「…俺」
「ぜっったいに俺っっ!」
…水掛け論しない。周りだってもう此方しか見てない…恥ずかしくないのか、この人たちは…
「じゃあっ!私が真ん中入るからっ!」
「…それがあったか」
「チッ。折角独占タイムがあると思ったのにぃ…」
し、舌打ち?それに
「何そのタイムっ。信っじらんないっ。」
「顔、紅ない?大丈夫?」
「紅くないっ。バカっ。人でなし!」
言ってからしまったと思った。流石に今の言葉は言い過ぎた。心配してくれたんだとは思う。だけど私は田辺くんを突き飛ばしてしまった。
「ごめん…配慮が足りなさすぎた。どうか罰を…」
佐藤さんが声を掛けてくれた。けどそういう気分じゃ無くない。罰を、なんて言われても何もできない。となると逃げるに他がない。
「…お腹空いてないし、まだいらない。」
言葉を濁しつつ言うと私は部屋に戻ろうとした。駆けだした。
でも広がる景色はただただ長いだけの廊下…もう少し分かりやすい作りなら良かったのに…
「…お嬢っ様…朝ご飯はしっかり食べないとっ…体に悪い……」
うわ。お母さんのよくいうセリフで佐藤さんが追ってきた…
もういっその事此所から抜け出すのもアリだけど、さすがにこんな時間で二回目の抜け出しは…だって普通にお腹は空いている…・・・他にもちょっとなら理由もあるけど…
「失礼っ。」
意識が飛びかけた時だった。いきなり体が『ふわっ』となった。最近のお約束であるお姫様抱っこをされた私は抱き上げた人物を見た。見上げると見たことのある顔。…というより見慣れた顔。
「桐本直樹…!?」
「さすがっ。正解だよっ。」
やっぱり…桐本直樹だった。というか何なんだ、一体…一体、あの学校はどうなってんだ?
「…桐本っ!…知り合い?」
「ん?隣のクラスで、去年のクラメイっ。」
「私の学校って一体…」
「え?だってさっ。田辺が行っているんだよ?僕だって行ってるよっ。それに、現魔王様がいらっしゃる所だよぉ?通うにきまってんじゃん。あぁ…あの御方こそ我が主っ!」
「現魔王様?…って、誰?」
「だ、誰って…何て事をっ!玲実の担任の大貴様っ!…知らないの?」
・・・は?
「気のせい、かな…大貴先生の名前っぽいのが聞こえたような気が…」
「気のせいじゃないよっ。合ってる合ってるっ。大貴様が、現魔王様。言ったら玲実のお父様、だねっ。」
お、お父さん?!!?
「確かに大貴先生、結婚してる先生だけれどもっ!!」
「だから、玲実が娘だよ?」
「だよ?…じゃなくてっっ!…てかさ、大貴先生の娘さんは結実じゃ無かったっけ?」
「ま、そこらへんは色々あるんだよ。でも大貴様は現魔王様で玲実はその娘なのは事実っ。だから玲実は、次・期・魔王様なんだよっ」
どうして、あの先生がお父さんなワケ?…というかそれ、マジすか…?