「お嬢様はもう、一人じゃない。」
佐藤さんの声…
「…お待たせしました。もう傷は治りました。」
無事で良かった…
「でもまずは赤崎や…」
「翔、ダメ…っ!」
翔の服の袖を掴んだ。行っちゃダメ、心がそう言ってる…
「玲実、これは僕からもお願いする…行かせて?」
直樹が肩に手を置いた。
私は手を振り払った。
「ダメ…貴教は悪くない。」
「そんなこと…」
「そうでしょ?貴教は好きだって言ってくれた…嬉しかった。でも、全部私の所為で貴教は殺人を…」
「五月蝿いっ!…貴女は何も解っていない。僕は、僕が…」
「どうするの?また争いだけを生むの?…貴教、お願いだから…少しくらい、頼って?」
突然のことだった。一つの雨粒が頬を伝って手の甲に落ちてきた。そしてそれが光った。私は光に包まれた。まるで自分が他人になっていく感覚…
光が収まると、私はスッと地面に降り立った。パッと手を上にあげる。私の中の力がぐねぐねと渦を巻いている。その全部を掌に集中させる。そしてそれを一気に解放した。
私の中の全部が無になっていく…辛いことも、嬉しかったことも楽しかったことも全部全部、全部…
解放した『モノ』は光の雨となって魔界に降り注いだ。そして、色々なものに触れていくと世界に色が生まれた…枯れた木々には深々とした緑が色付き、くすんだ空は赤く染まった夕焼けを綺麗に映し出していた。壊れた建物も住める本来の姿を取り戻した。
「綺麗…」
そっと声に出た。仕方がない。この光に包まれた場所は、とても神秘的で美しかった…