「佐藤さんっ!…貴教、お願いだから佐藤さんを離して。」
「出来ない…」
「どうして佐藤さんなの…?佐藤さんに罪は無い。あるのは私だけなんでしょ?私が逃げ出したからなんでしょ!…お願い、佐藤さんを離して。」
貴教の顔がクッと歪んだ。
「だったら僕に付いてきて…」
「…お嬢様、いけません。」
佐藤さん、ごめんなさい。やっぱりこれは私の責任だと思うの。
「良いよ。付いていく。でも先に佐藤さんから離れて。彼の安全が先。」
貴教はスッと離れた。佐藤さんは私に近付こうとした。
「来ないでっ!…これは命令。もう誰も傷付けたくない…せめてもの償いさせてよ…?」
「お嬢様っ!どうしてそうおっしゃるのですか!…私には出来ません。もう、執事佐藤でなく佐藤義統として行動させて頂きます。」
…どうして?私一人でも良いでしょ?もう誰も傷付けたくないんだから、私だけで構わない、はず。
佐藤さんは私の腕を引っ張った。しかし次の瞬間に引っ張る力は失われた。そしてドサッと鈍い音がする。
「佐藤さん…?」
佐藤さんが倒れていて、そこからは血が流れている。
「いや…っ!嫌、嫌だ嫌だ嫌だっ!どうして私じゃないの?どうして…?佐藤さん、お願い…」
こんなの…気分が悪くなるだけじゃない。辛いよ。怖いよ。
涙が止まらない。…吐き気がする。
「これはお前が招いた結果だ。」
貴教が怖い…