次の日。
私は佐藤さんにお願いして記憶が戻ったことを黙ってもらっていた。
そしていつも通り、図書室に行った。佐藤さんはいつも外で待っていてくれるけどこれからは絶対に離れないと言って図書室に入ってきた。
「玲実…」
貴教が、私を見つけた。いつもは明るいのに、佐藤さんを見た瞬間に表情が曇った。
「貴教、昨日読んだの、面白かったよっ!」
私はできるだけ普通を押し切った。キキさんのコーナーへと走っていく。
「…お嬢様、あんまり無茶をしてはいけません。」
「解ってるよ。ね、貴教の好きなキキさんのって…」
「動くなっ!」
階段を登っていると響いた、冷たい鉄のような無機質な声。振り返ると、貴教が佐藤さんに刃物を突きつけていた。