「あ…来てくれたんだ。」
放課後。図書室に入るとすぐに貴教が出迎えてくれた。
佐藤さんは図書室の外。翔は小テストの再テストで直樹は浩也と一緒に大貴の所。
私は一人で図書室に入った。
「約束、したから。」
「でも忙しくない?勉強とか、家の事とか…」
「確かに忙しいかも。けど今日は貴教との約束が先だったから…でもそんなに言うんだったら帰っちゃうよ?」
「そんな怒らないでよ…気に障ること言ってごめん。」
「良いよ、大丈夫。」
その後は二人で笑い出しちゃった。面白い。
急いで階段を登って貴教の所へ行く。そして二人でキキさんのコーナーへ向かう。
「あ…」
キキさんの所に行くなり私は驚いたというか感動したというか…キキさんの本が年代順に並んでる!こうやって改めてみると凄いなって思う。
「どう?結構頑張ったでしょ。」
「凄い…」
思わず声が漏れた。表紙からも伝わってくるキキさんの世界…
「また頑張って読まないと。」
「あんま無理しちゃダメだよ?」
「解ってるよ。でもね、こうして見るとこう…伝わってくるの。美しいキキさんの世界が。」
「玲実は感受性豊かなんだね…良いと思うよ、そういうの。」
「…ありがと。」
こういう風に言ってもらえるのってすごく嬉しい。…なんか心がポッてあたたかくなる感じ。つい、自然と笑顔になる。私が笑うと、貴教も笑ってくれた。ふわって何かがやさしく舞い降りた感覚。雪の地面に、フワッて新たな雪が降ってきたような感じ。
「…玲実。」
「どうしたの?」
「実はね、『ちっぽけな』の続編が決定したんだよ。」
え…?いつの間にそんな情報が?
「マル秘情報なんだけどね。」
そう言って苦笑する貴教の顔は少しだけ嬉しそう。
「その情報…何処で?というか『ちっぽけな』ってもう五年以上前の作品なのにどうして今更…」
「ま、そこは詳しく言えないけど…嬉しい?」
「うん…凄く。」
…でも、気になる。
「貴教って私がキキさんを好きって言ったとき趣味悪いって言ってなかった?どうしてそんな情報知ってるの?しかも極秘の。」
「そこは聞いちゃダメだよ。」
貴教は軽くポンと頭を叩いた。
「わ、解った…」
「今日言いたかったことは終わり。…来てくれてありがとう。」
「うん…じゃ、私そろそろ帰るね?また明日…」
貴教は手を振った。私も手を振り返して、図書室を出て行った。