玲実が図書室から出て行ったのを確認すると、貴教はふぅ、と腰を下ろした。そしてフッと嗤った。ニヤニヤが止まらなくなってしまった。嬉しすぎるのだ。
「はぁ…フロリナ様が知って下さっているなんて幸せ者だなぁ、僕も。」
「…ちゃんと仕事はしてくださいよ?」
司書席の方からする声に貴教の笑顔は一瞬で無くなり、冷やかな顔になった。
「解ってるよ、五月蝿いなぁ…彼女はちゃんと殺すよ、この手で。あの大魔王ウィンの娘って聞いてたからどんな憎らしい娘かと思ってたけど…ね、殺さなきゃダメ?絶対?」
「何を言い出すの?…あの大魔王ウィンの娘は生まれ持ってのその魔力で国を破壊した。私たち一般市民は壮大な被害を受けた。それなのに当の本人はあんな能天気…」
「…彼女、何にも知らされて無いっぽいけど。噂じゃ魔力を失うと同時に魔界追放、魔界での記憶も没収されたそうだよ。挙句の果てには実の親と別れて暮らす。それも当時六歳。幾ら彼女が超人だからって、六歳の女の子にそんな仕打ち…しかもこれから殺されるなんて可哀想だなって思わない?」
「…同情ならいらないわよ。」
「同情じゃないよ…本当に殺す意味ってあるのかなぁ?」
「あるわよ。何時になっても構わない…彼女をちゃんと殺すこと、しっかりなさい。」
「解ってるよ…何時かちゃんと、ね。」
貴教はまた、赤碕キキのコーナーへと姿を消した。