朝食を食べ終えると「今日は勉強だから」と言われた。勉強といっても学校のようなものではない。あの超多い必須☆事項のうちの一つをやる、と言われた。
と、いうことで現在は屋敷の離れにある一軒家ぐらいの大きさの家にいる。この外見も、屋敷と比べると小さく感じてしまう。一体どんだけ大きな屋敷なんだよ!
…でも、魔界のお城に比べるとかなり小さいらしいからな…
「…何から始める?」
「やっぱ召喚とちゃう?召喚が一番使い勝手がええから。」
「じゃ、じゃあ…僕は屋敷の方へ……何時されても大丈夫なので。」
鈴木さんは屋敷へ帰っていった。私が首を捻ったのが解ったのか、説明が始まった。
「すっちは召喚役ってこと。魔界人は一人に一つ、必ず自分の魔法陣を持っているから。じゃあまず、お手本として召喚するよっ」
そして、謎の言葉を並べる桐本直樹。すると、煙と共に何か物体が出てきた。
「この子、僕の使い魔なんだよっ。いい子だから大丈夫っ。」
「嘘つきやなぁ。あんた以外は近付いただけで何かすんのに。」
「それは翔がいけないこと沢山するから。玲実みたいな人だったら大丈夫だよっ。ね、ピーちゃん。」
すると、ピーちゃんと呼ばれた使い魔はピー、と可愛らしい声で鳴いた。
「ピーって鳴くからピーちゃん…?」
「そうだけど?可愛いでしょっ。ほら、ピーちゃん。この方は僕の御主人様の玲実様だよっ。玲実は優しいから大丈夫。」
すると、ピーちゃんはピーッ、と一つ鳴いて私の腕に捕まった。意外と軽く、近くで見ると余計に可愛らしく見えた。
「まぁ、これは序盤として。すっちの魔法陣が此処にあるとしよっか。」
そう言ってスチャッと魔法陣の書かれた紙を出した。
「何でもええから言ってみぃ。」
「鈴木さん…?」
すると、さっきと同様、煙と共に鈴木さんが出てきた。
「…それで出るのか?」
「やっぱり…魔王様の血だから…?」
「召喚必須言葉全く言ってないやん。やっぱすっちの魔力の所為…?」
「これは…ちょっと僕を召喚してみてっ。魔法陣はこれだからさっ」
私に桐本直樹の魔法陣を押し付けて、彼は遠くへ走っていった。話の流れ的に、今度は桐本直樹を召喚するみたい。
「今度はその魔法陣に向かって『直樹』って言ってみてーっ!」
ある程度離れる…というか部屋を出て廊下の辺りまで離れると桐本直樹は叫んだ。
「き…な、直樹っ!」
次の瞬間、私の目の前に桐本直樹の姿があった。召喚成功…?
「やっぱり…こうなったらっ!」
「…執事長。」
今度は佐藤さんが私に魔法陣を渡した。
「えっと…」
「龍二、だよっ。確かにみんな『執事長』って呼ぶからね〜。」
私が執事長の名前を思い出せないのを見抜いたのか、桐本直樹が教えてくれた。そう言えばそうだった…確かそんな名前だった気がする。
「り…龍二、さん?」
煙の後、執事服の上に更にエプロンを重ねた執事長がいた。
「なっ…なななな何なんですかこれはっ…!・・・お嬢様…?」
田辺くんと桐本直樹の笑い声が後ろあたりから聞こえてくる。ま、まさかの悪戯…?
「…油断したみたい。」
佐藤さんも笑ってるみたい…
「ひっ、引っ掛かっとるし…っ!」
「龍二ぃ、ひよこエプロンは無いでしょ…っ。お腹…いっっ。」
確かにひよこエプロンだけど…
「これは…っ」
執事長、言い辛くなってるじゃん。顔真っ赤だし。
私も、同じ立場だったら全く言えなかったかも…だけど今のが仮に結実だったらおもいっきり笑ってたかもしれない…
「…でも、そこまで笑う必要は無いと思うけどなぁ。だって執事長には執事長なりの理由があったんでしょ?」
ピターン…
静まり返ってしまった。ま、まさか言っちゃダメ?
「そこは笑うべき?…で、でもそれじゃ執事長が…えと…私はどうすれば良かったの?」
「アンタってやっぱ優しすぎやな。…ま、それはアンタらしいからいいことやけどな。」
「玲実の良いところだよねっ。魔王様としては…変だけど。」
「…良いんじゃない?それがお嬢様だから。」
「救いの言葉を私めに…有り難う御座います、お嬢様。」
「あっ…えと…これで、召喚は完了、ですね…」
完了。…ということは、今ので出来た、ということか。
「早いなぁ。さすがやわ。」
「…さっきの『鈴木さん』、『直樹』、『龍二さん』でこの三人はでてくるから。」
…ということは…
「その三つの言葉が、さっききり…直樹がお手本でいった謎の言葉みたいなもの?」
「そ、うですよ…というか僕、名前だけで召喚されていたんですね…」