「あぁ、お嬢様は此方へ。」
そう言って執事長が示したのは、この部屋の更に奥の部屋。
私は執事長に続いて扉の近くまで行った。そして扉を開いた。
中は色々な服が沢山あった。服と言ってもどれも私にはとても縁の無いような服ばかり。
とてもキラキラしていてふんわりとしたドレスや、凄く可愛くてちょっとしたパーティーに行くときに着るようなワンピースまで。私、というより結実が着ているイメージのある服ばかり。
「これをどうしろと…?」
「さて、どれに致しましょうか。」
あれ?執事長、やけに楽しそうでは?
「ドレスもええけどさ、このワンピースも似合うと思わへん?」
「…こっちの方が良い。」
「やっぱりオレンジがいいよっ!」
「あと…その…ほんのりとした優しい色のドレスの方が…フロリナ様は綺麗かと…」
おいこらそこまて。
なんかスッゴく楽しそうだけど、男数人がドレスを選んでいるって、かなり違和感のある光景なんだけど…
あの人たちはじっとするという事もできないのかな…?
「…ん。」
佐藤さんが一着のドレスを私の前に突き出した。
淡い水色を基調としたドレスで、胸元が濃い蒼色をしている。胸元の蒼色は、お腹にかけてだんだん色が薄くなっていき、最後には白色になっている。そしてスカートの部分になると、周りと同じ淡い水色になっている。胸元は開き気味。袖はちょうちん袖でふんわりとしている。
「これを…着ろと?」
確かめるかのように言った。
「…そうだけど。」
即答された。皆、表情は少し違うけど着ろと言う事を顔に出している。
「じゃあ、出て行って。」
「どうして?」
どうして?じゃないでしょっ。この人たち、予想以上に面倒くさい。
「私は女っ!男性に着替えなんて…見せられるワケが無いよ!」
皆はようやく頷いた。
「そーいや慣れてなさそうな感じやしな。」
「…こういうのはNGなのでしょうか…?」
ぶつぶつと皆で何か話していたけど、とりあえず皆は部屋を出ていった。バタンと最後の一人がドアを閉めていったのを確かめて私は服を脱いだ。
そして佐藤さんから渡されたドレスを着た。こんなの、私が着て似合うワケが無いと思いつつ、意外と似合っているかもしれないとも思った。ドレスは私にぴったりのサイズだ。
「…一応着てみたけど・・・」
ドアを開きながら言った。皆は待っていたかのように話した。
「ええやん、ええやん!めっさ可愛い。」
「…やっぱり似合う。」
「ええ。これで問題は無いようです。」
「全てが綺麗だよねっ!」
「あ、その…そのあの…と、とても御綺麗です。」
「そんなに…?」
「勿論っ。」
「着替えは終わったけど…これからどうなるの?」