もっと視界をあげると、男の子の姿が。
私はまた、視線を床へと戻した。
私の心は、こんな親切な人にさえ
怯えてしまう。
こんな心、なくなればいい。
そう思っても、この臆病な心は
私から離れることはなかった。
このまま、差し出された手を
掴まなければ、この人もきっと
諦めてどこかへ行ってくれる。
…そう、今までの人と同じように…。
本当に、ごめんなさい…。
心の中で謝ると、床をうつす私の目に
再び彼の手が見えた。
その手は私の手を掴んで、そのまま
立たせてくれた。
私が立った時、ちょうど5分が経った。
あぁ…始まってもい高校生活が
終わった…。
家に帰ったら、泣こ。
と考えていると、あることに気づく。
…手、繋いだまま…。
お礼…言わないと…。
「あ…あの、ありがっ………」
ないに等しい勇気を振り絞って
言った言葉は、校長先生の声が
見事に掻き消す。
…勇気が………。
「では、仲間を見つけられた人は、
その人達と手を繋いであげて下さい。
あげられなかった者は………」
___入学取り消し___。
…私のことだ…
そう、私のことのはずなのに…。
さっき立たせてくれた彼の手があがる。
そして、まだ繋がれたままの私の手も
あがったのだった。