話をしたのだってたった数分だし。
絆創膏はたまたま持っていたから差し出してくれただけだろうし。
絢斗くんはわたしなんかと話したことすら覚えていないのだろう。
そうなると、わたしから話しかけるのってちょっと難しい。
わたしはあの瞬間絢斗くんにときめいて、彼のことが気になって、彼のことを見るたびに胸を鳴らしているんだけどな――
お昼休み。いつものように廊下を歩いて絢斗くんの姿を探したけれど、友達と購買に行ったのか、彼は教室にも廊下にもいなかった。
教室に戻って、廊下側から二列目の一番後ろにある自分の席に座り、溜め息を吐く。
恋だよねえ、これ。気づいたら絢斗くんのことばかりじゃん、わたし。
ぼうっと絢斗くんのことを考えていると、クラスで仲良くしている友達の沙耶《さや》がわたしの元へやってきた。
入学して数日後の体育の時間に意気投合して仲良くなった女の子。
胸元までの黒髪と、ぱっちりとした二重で明るい性格をしている。
「菜々花! お昼ご飯食べよう!」
「うん、食べよう」
沙耶はにこにこしながら前の席の椅子をこちらに向け、わたしの机にオレンジ色のお弁当箱を置いた。
わたしも鞄から薄いピンクのお弁当箱を取り出す。
絆創膏はたまたま持っていたから差し出してくれただけだろうし。
絢斗くんはわたしなんかと話したことすら覚えていないのだろう。
そうなると、わたしから話しかけるのってちょっと難しい。
わたしはあの瞬間絢斗くんにときめいて、彼のことが気になって、彼のことを見るたびに胸を鳴らしているんだけどな――
お昼休み。いつものように廊下を歩いて絢斗くんの姿を探したけれど、友達と購買に行ったのか、彼は教室にも廊下にもいなかった。
教室に戻って、廊下側から二列目の一番後ろにある自分の席に座り、溜め息を吐く。
恋だよねえ、これ。気づいたら絢斗くんのことばかりじゃん、わたし。
ぼうっと絢斗くんのことを考えていると、クラスで仲良くしている友達の沙耶《さや》がわたしの元へやってきた。
入学して数日後の体育の時間に意気投合して仲良くなった女の子。
胸元までの黒髪と、ぱっちりとした二重で明るい性格をしている。
「菜々花! お昼ご飯食べよう!」
「うん、食べよう」
沙耶はにこにこしながら前の席の椅子をこちらに向け、わたしの机にオレンジ色のお弁当箱を置いた。
わたしも鞄から薄いピンクのお弁当箱を取り出す。

