中庭でもジュースやたい焼きを売っていて、賑わっている。

近くの通路も生徒や外部の人たちが行き来していた。

「ねえねえ、菜々花」

たこ焼きを全部食べ終えた沙耶が次にチョコバナナを手にしたとき、落ち着いた声をだした。

わたしは首をかたむけて沙耶を見る。

「ここ数日、菜々花元気になってきたけれど……梶本くんのこと、本当にもういいの?」

そっと様子を窺うように訊いてきた沙耶に、わたしは小さく笑みを作った。

「沙耶はいっぱい励ましてくれたよね。ありがとう。絢斗くんのことは……もういいんだ」

「まだ好きなんじゃないの?」

「好き……だけどさ、ダメなんだよね」

好きな人がいて、わたしと付き合ったことを後悔してる相手には、もうどうやったって想いは届かないでしょう。

「そのうち忘れるよね。たった一ヶ月の付き合いだったし」

明るく言ってみたけれど、胸はズキンと痛んだ。

わたしはあの一ヶ月を忘れたいなんて思えない。

だけど。

「諦めるよ」

立ち止まったまま惨めな思いをするのは嫌だから。