大好きなきみと、初恋をもう一度。

***


恋って、本当に突然しちゃうんだなって思った。

ふとしたきっかけ。何気ない行動。
本当に、一瞬。


新学期。まだ暑さが残る九月。

わたしの視線は、夏休み前まで特別意識するようなことはなかった彼のことを追いかけていた。

梶本 絢斗くん。

あの日は茶髪だったけれど、夏休み明けの彼は黒髪だった。

着崩した制服。独特な雰囲気と、整った顔立ち。

わたしは休み時間になると、廊下に出て隣のクラスをさりげなく覗きながらトイレに向かう。

あまりじろじろ見るわけにはいかないから、本当に一瞬。

彼の姿を探して、色々な表情を見た。

時に、廊下で話している男子グループに絢斗くんがいると、その脇をどきどきしながら何ともない顔をして通っていた。

すれ違う時、もしかしたらお祭りの時のことで話しかけてもらえるかなあ、と期待したけれどそういうのはなかったし、目も合わなかった。

きっとあの時のことは絢斗くんにとって何気ないものだったんだと思う。