大好きなきみと、初恋をもう一度。

わたしはしばらくその場に立ち尽くしていた。

佐藤さんの言葉が頭の中でぐるぐるする。

彼女づらなんてしていないのに……。
キツい声で言われて、無性に悲しくなった。


トイレから出てとぼとぼと廊下を歩いていると、教室の前で沙耶と敦瑠くんが話しているのを見つける。

ふう、と息を吐いてからそばまで寄ると、二人はわたしに気づいて顔を見合わせた。

「なに?」

気まずそうな態度をされて、なんとなく、わたしに関わることを話していたんだろうと察した。

「あー……えっと、うん」

敦瑠くんはちらちらと沙耶を見ていて、それが「どうする?」と問いかけているように感じた。

沙耶はわたしを見つめたあと、敦瑠くんにうなずいた。

そうしたら敦瑠くんはこちらに顔を向ける。

「あのな、昨日の放課後みんなで文化祭の準備してて、それでちょっと話したんだけど……」

敦瑠くんは言いづらそうに視線を落とした。

「絢斗、好きな女がいるって言ってた。誰とは言わなかったけれど、その子以外とは付き合いたいと思えないって」

一瞬、周りの音が聞こえなくなった。

大きなショックが全身を突き抜ける。

わたしはうつむいた。

「……そうなんだ」