大好きなきみと、初恋をもう一度。

クラスのみんなで適当に語りはじめ、女子も男子も笑う。

うちのクラスは結構仲がよかった。

わたしは盛り上がる輪からそっと抜け、教室を出てトイレへ向かった。

無意識にため息をおとす。

普段は授業の時間帯で廊下は静かなはずだけれど、今日は文化祭の準備で少々ざわついていた。

廊下を歩きトイレの中へ入ったとき、わたしはどきりとして足をとめた。

鏡の前で佐藤さんが髪を整えている。

気づいた佐藤さんがこちらに顔を向け、わたしと目を合わせた瞬間きつい表情になった。

何ともない感じで個室に入ってしまえばよかったのに、明らかに不機嫌そうな顔をされたわたしは戸惑って動けなかった。

そのまま立っているわたしに、佐藤さんは愛想のない声を出す。

「もう梶本くんと別れたんだよね?」

「……うん」

佐藤さんのツンとした態度に、わたしはどうしていいのかわからなかった。

「なら睨まないでくれる?」

「え……?」

「昨日睨んでたじゃん、わたしのこと」

「べ、別に睨んでたわけじゃ……」

「もう梶本くんと広田さんは関係ないのにさ。いつまでも彼女づらしないでよね」

そう言った佐藤さんは、わたしを睨みながら横を通ってトイレから出ていった。