大好きなきみと、初恋をもう一度。

***


絢斗くんを見かけると、切ない気持ちでいっぱいになる。

そして沸き上がる気持ち。

まだ、好き。


水曜日。

どうしても気持ちを切り替えることのできないわたしは、頑張って笑顔を作っていてもどこか上の空だった。

だけど数日前よりはずいぶんましになったと思う。

ご飯も結構食べられるようになった。

でも考えるのは、思い出すのは、絢斗くんと付き合っていた一ヶ月間のこと。

なんだったのかな。

好きな人と付き合えて、どきどきして、嬉しくて。

つい最近まで幸せな気持ちばかりだったのに。

秋風に吹かれて切ない想いがさらに増した。


文化祭の準備などで放課後いそがしく準備をするクラスが目立つ。

うちのクラスは駄菓子を売るだけだから、準備といっても値段のプレートや飾り付けくらいであとは頼んだ駄菓子を待てばいいだけだから、とくに放課後残るようなことはなかった。

楽だ、って男子が喜んでいた。

「菜々花、今日バイトなのー。先帰るねっ。また明日!」

「うん、じゃあね」

急ぎ足で教室を出ていった沙耶を見送り、なんとなく机のなかを整理してゆっくりと支度をしてから席を立った。

「なにそれ、超バカじゃーん!」

廊下を出たとき、女の子の楽しそうな声がした。

振り向かなければよかった。

そんなのは、後から思うことで。

反応してしまったわたしは、声のしたほうに顔を向けてしまった。

そこには、隣の教室の前で楽しそうに話す絢斗くんと佐藤さんがいた。