昼休み。

廊下に出たとき、絢斗くんの姿を見つけた。

脈がいっきに速くなって息苦しくなる。

彼は教室の前で友達と話をしていて、こちらに向かって歩きだした。

あ……どうしよう。

絢斗くんがわたしに気づいて目があってしまった。

だけど――すぐに視線をそらし、わたしの隣をなにも言わず通っていった。

ズキン、と悲しい鼓動が壊れそうなくらい強く鳴った。

絢斗くんの周りの友達たちがいつもと違うことに気づき、「もしかして別れた?」と笑いながら彼に聞いている声がした。

胸が痛む。

わたしと絢斗くんの付き合いはたった一ヶ月程度のものだった。

だけどわたしは色々なことがはじめてで、絢斗くんのことが好きで毎日彼のことを考えていて。

一ヶ月、本当に特別な日々だった。

あんなに、楽しかったのに。

嬉しかったのに。

こんな気持ちなのはわたしだけ?

絢斗くん……。

がやがやと騒がしい昼休みの廊下でうつむくわたしの瞳に、じわりと涙が浮かんだ。