大好きなきみと、初恋をもう一度。

そうしたら絢斗くんは眉尻を下げて笑った。

「帰らないとお母さん心配するだろ?」

「あ……」

すっかり忘れていたわたしは、握る手の力を緩めた。

昨日お母さんが心配してるってお姉ちゃんから電話がかかってきたから、絢斗くんは気にしてくれているのだろう。

「明日も会えるし」

「うん」

そうやって考えてくれることに温かさを感じたけれど、でも、本当はもっと一緒にいたいって気持ちでいっぱい。

わたしは一度しっかり唇を結んで我慢して、それから声を出した。

「絢斗くんの家は遅くまで遊んでても平気?」

「あまりうるさくは言われねーけど、遅くなるときは連絡してる。飯の支度とかあるだろうから」

「そうなんだ。四人家族って言ってたよね? お姉ちゃんとか弟がいるの?」

なんとなく聞いたわたしを絢斗くんはじっと見つめた。

わたしは首をかしげる。

「どうしたの?」

「……別に。なんでもない」

そっけない声にわたしは不安な気持ちになった。

なんだろう。一瞬、いつもと絢斗くんとは違った雰囲気だったような気がした。

考えているうちに家に着いてしまう。

「じゃ、また明日学校で」

「うん……じゃあね、またね!」

絢斗くんはわたしに微笑んで、手を振ってから背を向けて帰っていった。

絢斗くん、行っちゃった。

家の前だから仕方ないけど、すぐに帰っていってしまった絢斗くんの姿に、ちょっぴり寂しさを感じた。