大好きなきみと、初恋をもう一度。

二人で大笑いしていた。

さんざんタコさんを馬鹿にしたくせに「あれ、なんかちょっと可愛く見えてきちゃったんですけど」と沙耶はキーホルダーを家の鍵につけてくれた。


昼休みが終わる頃、トイレに向かおうと教室の外に出たら、絢斗くんも教室から出てきた。

移動教室らしい。

こちらに気づいた絢斗くんは、口許に小さな笑みを作った。

思い出しちゃう、昨日のこと。

キス、したこと。

学校で思い出したらだめ、だめ。

落ち着くために深呼吸をしたわたしは、絢斗くんのそばに駆け寄った。

「あの、絢斗くん」

「うん?」

絢斗くんは寄って来たわたしを見つめて首をかしげる。

好きって気持ちでいっぱいになって、鼓動はとても速かった。

頬も熱い。

「えっと……今日一緒に帰れる……?」

自分から言うのは初めてだったから、恥ずかしかった。

「帰れる」

口許を緩めてそう返事をしてくれた絢斗くんに、わたしはわかりやすくぱあっと顔を明るくした。

それを見た絢斗くんは一度足元を見て、再びわたしに視線を戻すと目を細めて微笑んだ。

「じゃ、放課後な」

「うん!」

わたしは微笑み返す。

絢斗くんは友達と一緒に階段の方へ歩いていった。

まだ胸の音がすごい。昨日の今日だからっていうのもあるのかな。

放課後が待ち遠しい。

絢斗くんの姿を見送ったわたしはトイレに寄って教室へ戻り、午後の授業を受けた。