大好きなきみと、初恋をもう一度。

絢斗くんは応えるようにわたしの手をぎゅっと握った。

わたしの鼓動はうんと速くなる。

「あの日、夏祭りのときに絢斗くんと話せてよかった」

「……え?」

絢斗くんはわたしに顔を向けて首をかしげた。

そういう反応をされても仕方ない。

「絢斗くん、忘れちゃってるでしょう。夏祭りに会ったこと。学校で喋ったこともなかったし、しょうがないよね……。でもわたし、あの時絆創膏をくれた絢斗くんの優しさに、すごくどきどきしたんだ。それがきっかけなんだよね」

わたしははにかんでそう言った。

あの日、絢斗くんと会っていなかったら、夏休み明けの学校で絢斗くんのことを目で追うことはなかっただろうし、意識することもなかったと思う。

絢斗くんは瞬きせず、わたしをじっと見つめていた。

たぶん、記憶を辿って忘れていたのを思い出そうとしているのだろう。

わたしはしっかり覚えていたのにな、なんて、ちょっときまりが悪くてうつむいた。

「……そうか。全然気づかなかった」

「うん」

わたしは下を向いたまま頬を緩める。
思い出してくれたかな、あの時のこと……。


そう思って歩いていたら、わたしの家の前に着いた。

「送ってくれてありがとう」

「ああ」

「また明日ね」

「うん。また明日」

絢斗くんは眉尻を下げて笑った。

もう会えないってわけじゃないのに、なんだか切なくて、胸が締めつけられるような気持ちだった。

わたしは家の前から去っていく絢斗くんの姿を見えなくなるまで見つめて、それから家の中へ入った。