大好きなきみと、初恋をもう一度。

数秒前の自分を後悔。

何が喋る勇気よ。わたしの方へ相手が向かってくるとわかった瞬間、体がこわばる。

花火なんてもうどうでもよかった

今まで話したこともないのに。
だれ? と聞かれて、どう答えればいいのかわからない。

「広田 菜々花《ひろた ななか》です……」

とりあえずのフルネーム。鼓動は速い。

「あー……」

絢斗くんはわかったような、わかっていないような、曖昧な声をだした。

思いだそうとしているのかもしれない。しかし思いだすも何も、関わったことがないのだから知らなくて当然。

なんだか申し訳ない。

「あの、喋ったことはないの……ごめんなさい……」

「――だよな。なんか名前にピンとこねーって思った」

彼は笑った。と、思う。
俯き気味だったからはっきりとはわからない。
だけど声がやわらかくなったから、笑ったように感じた。

「な、なんか、一人で花火見てたらさ、見たことのある人が歩いてきたから、つい声が出ちゃって!」

「そっか」

「う、うん」