わたしが緩みそうになる頬を意識していると、視線を感じて絢斗くんの方を見た。
彼はわたしをじっと見ている。

「あー……その、学校で話しかけられるの嫌?」

「えっ、そんなことないよ、嫌じゃない!」

気を使うような彼の声に焦ったわたしは大きめの声を出していた。

わたしがいつももじもじしているから、嫌だと思っていると誤解されたなら違うと全力で否定したい。

「気にしないで話しかけて! わたしも、絢斗くんに話しかけるから……恥ずかしいけど……もっとたくさん話したいから……」

最後の方は小さな声になってしまった。
すると、絢斗くんがくすくすと笑う。

「な、なに?」

「いや、こっちが照れるくらい素直だなって」

唇の端を上げている絢斗くんは、わたしを目尻で見つめた。

「可愛い」

その言葉のあと、わたしの手がぎゅっと握られた。

うわあ……。 心臓もぎゅっとされたみたいな。可愛いだなんて、そんなことを言われるとは思っていなくて。

どうしようもなく恥ずかしくなって、わたしは何も言えずうつむいてしまった。

「すぐ下向くけどな」

ちょっとからかうように笑った絢斗くんの声。どきっとした。