大好きなきみと、初恋をもう一度。

自然と「好き」という言葉が出ていったのだから。


「一時間目、化学室だよねー」

一度自分の席に戻った沙耶が再びわたしの元へ来て、教科書を持って教室をでた。

「あ……」

そして、ドアの近くで思わず立ち止まる。
ジャージを着た絢斗くんたちがいたから。

絢斗くんのクラスは体育みたい。

近くには敦瑠くんもいた。すごくだるそうに、癖のついた髪をいじっている。

「おはよー、敦瑠!」

「おう」

沙耶と敦瑠くんが挨拶を交わした。

それに気づいた絢斗くんの顔がこちらに向いて、彼の視線がわたしをとらえた。
胸が鳴る――

「おはよ」

わたしと目を合わせている絢斗くんは、一見素っ気ない感じだった。
だけど、わたしのことをちゃんと見て挨拶してくれて……。

「お、おはよう!」

慌てて挨拶を返したら、どもってしまった。
周りの男子もちらちらとわたしを見てくる。

恥ずかしくなってきて、堪えきれなくて顔を下げると、すっと横に人が寄ってきた気配を感じた。

ゆっくりと顔をあげたら、そばには絢斗くんがいた。

「化学?」

わたしより20センチくらい背の高い彼を見上げながら、わたしは一生懸命頷く。

「あ、絢斗くんは体育なんだね。頑張ってね」

「ん」

絢斗くんが短い返事をしたあと、彼の友達が歩き出した。
やはりわたしのことをじろじろ見てくる。たぶん、絢斗くんがわたしのそばに来たから。

恥ずかしい。本当に恥ずかしい。ぎゅっと目をつむって俯くと。

「じゃあな」

――ふわり。絢斗くんの手がわたしの頭を撫でた。