「菜々花」

俺は菜々花の隣に立って、片腕で頭を抱えるようにして抱き寄せた。

本当は前から抱きしめたいけど、ここ道端だし。歩いてくる人いるし。

さりげなく、そのまま歩き出した。

「絢斗くん……」

困惑した声を出した菜々花の頭を撫でた。

「俺、菜々花のことすげー好き」

「っ……、わたしも、絢斗くんが大好きだよ」

「俺は菜々花が好きすぎて、菜々花が他の男と喋ってるともやもやする。でも、それは菜々花が悪いわけじゃない。俺が……余裕持てないのが悪いからで……」

本当は隠していたかった。

だけど菜々花を不安にさせたくない。

顔を上げた菜々花が俺を見た。俺はきまりの悪い顔をしていた。

こんなカッコ悪い自分、好きな女には知られたくねーだろ。

「絢斗くん、それって……」

「嫉妬。だな」

俺はため息混じりでそう言った。

今度は俺が不安だ。
菜々花はこんな俺のこと、どう思うのだろう。

呆れられても仕方ない。
そう思って覚悟していたけど、菜々花は安心したように頬を緩めた。