ちょっと待った。
宮下さん、勝手に菜々花に話しかけてじゃねーよ。

あの軽い感じで菜々花と喋ったのか。

俺の顔が険しくなっている。

「なんか言ってた?」

「え、えっと、ちょっと話しただけ。絢斗くんと仲良くしてるんだーって向こうは言ってて……」

菜々花は眉尻を下げて不安そうな表情で俺を見てきた。

はっとした俺は、菜々花から視線をそらす。

また不機嫌そうにして、菜々花にそんな顔させて。

本当余裕なさすぎだろ、俺。

「……帰ろ」

歩きだすために菜々花に言った言葉がそれだった。

なんで『行こう』にしなかったのかと後悔する。

ばつの悪い俺は軽くため息を吐いて足を動かした。

菜々花が後ろをついてきている気配がしていたから、そのまま歩き続けて歩道へ出る。

こんなことで嫉妬とかマジでカッコ悪い。くそ。

心の中で自分に舌打ちをしていた。

「絢斗くん、あの、宮下さんっていう人と仲悪いの?」

「は?」

もやもやしたものを消すのに必死だった俺は、後ろから聞こえた声に振り返ったとき、思わずキツい声を出してしまった。