大好きなきみと、初恋をもう一度。

「……伝票、ここに置いておく」

一応菜々花はお客さんなのに、俺はぶっきら棒な言い方をしてしまった。

そしてカウンターから離れようとしたとき。

「あ、あの、絢斗くん」

「うん?」

俺は動きを止めて菜々花を見る。

菜々花は俺をちらりと見て、少しうつむいた。

「何時に終わるの?」

「五時だよ」

「じゃあ、あの、待ってていい?」

頬を赤くしながらそう言った菜々花を見ていた俺は、一瞬ぼんやりとした。

鼓動が速くなっている。

俺は店の時計に視線を向けた。時刻は四時半。

「いいよ」

平然と答えたけど、胸の高なりはそのままだ。

菜々花はぱあっと顔を明るくさせた。

こういうのが可愛すぎて困る。

「麺のびるから早く食えよ」

「うん!」

割り箸をとった菜々花を見てから、俺はカウンターを離れた。

あー、やばい、頬の筋肉が言うこときかねえ。

俺は右手で口許を押さえながら店内の角へと寄った。

そこには宮下さんが先にいて、にやにやしながら俺を見てくる。

「お前本当、彼女大好きなんだな」

「……そうですよ」