画面を操作して文字を打つ。

もちろん、相手は菜々花。

日常のちょっとした報告。

『今日は家で数学の課題をやるの』と、菜々花からのメッセージに『俺は午後からバイト』と打った。

そして支度をして、両親が帰ってきて、早めに昼飯を食って家を出る。

菜々花からは『バイト頑張ってね』とメッセージが届いていて『おう』と返信した。

道を歩いて肌寒い風が吹くたびに肩をすぼめる。

バイト先の駅前のラーメン屋は、家から徒歩で10分くらいだ。

俺が着いたとき、お昼時の店内は満員だった。

「絢斗、早く着替えてフロア入って。今日マジ忙しい」

バイトの先輩で3つ上の大学生、宮下《みやした》さんが、ラーメンをカウンター席のお客さんに運んだあと、俺に急いで声をかけた。

そりゃな、日曜だもんな。

俺はひとつ息を吐いたあと、裏でお店のTシャツに着替えてすぐにフロアに入った。

そこから二時間くらい、注文と会計、片付けなどを繰り返してようやく立ち止まる間ができた。