その仕草に
隣の席の男性二人組は
一瞬会話を止めた
そして
こちらをチラリと見て
また話始める
大丈夫だよね
全然知らない人だし
蘭は全く気にせず話を続けた
「私さ心配なんだ
愛果がそんなに彼のこと
好きになってさ」
大きくため息をついた
空になったジョッキを見て
お替わりを注文しようとする
愛果はどうするの?
と聞くので
一緒に同じ物を注文した
週末の居酒屋は
アチコチで
笑い声が上がったり
話し声が聞こえてくる
「ハル君と一緒にいなくて
愛果よりもっと
美人で何でもできて
愛してしまった人が
出来ないなんて可能性が
無い訳じゃないもんね」
はあ、ごもっとも
「しかもハル君は
うちらと違う世界の人だし
彼カッコいいもんね
私なら放っとかないわ」
おーい、今問題発言出ましたよ
なんて
心の中で呟いた
どうもその呟きは
彼女に通じたらしい
ちょっと焦点の合わない
潤んだ瞳で
じっと見つめてきた
「会社員とか、小売業の経営者とか
自分の知ってる世界の人じゃないってこと
予測がつかなくてさ」
言いたいこと
なんとなく判る
人は知らないことに
不安を感じるのだ
私はそうだねと頷いた
でも、それはどんな人でも
一緒だよ
そう言ってみる
それを聞くと
蘭は少し考えてから
小さな子供の様に
コクリと頷いた

